てんかん症状が出ても慌てないで!

もし目の前で人が突然発作で倒れたり、顔面蒼白になるさまを見ると誰でも慌ててしまうことでしょう。
ましてや、ご自身のお子さんがそういった症状に見舞われたらパニックになっても無理はありません。
大抵は1分から数分で症状がおさまり、10~20分以内に意識が回復することが多い、ということを知っておく必要があります。

ここでは、慢性的な脳の疾患である「てんかん」の、具体的な症状の種類や特徴・原因を学んでいきます。
100人に1人の割合で発症し、老若男女問わず誰しもが発症する可能性があるため、きちんと把握して対処できるようにしましょう。
また、対処を誤る可能性を減らすために、てんかんに似ている症状も併せて学んでいきます。

てんかんの症状ってどんなもの?

てんかんは、脳の慢性疾患であり、発作を繰り返す脳の病気です。
脳に存在する神経細胞は、身体の各部への命令を電気信号で伝えていますが、突如発生する電気的な興奮・刺激によって発症するとされています。

てんかんの症状は、電気的な興奮が発生する箇所によって起こる症状の種類が異なります。
大きく分けて2種類存在しており、部分的に症状があらわれる部分発作と、全身に症状があらわれる全般発作に分類されます。
さらに詳しく言えば、部分発作は脳の一部の神経細胞が異常興奮を起こしているもので、意識障害を伴う場合は複雑部分発作、意識障害が見られない場合は単純部分発作と言います。

一方、全般発作は脳全体の神経細胞が異常興奮を起こすことで発症します。
全てにおいて意識を失うことが前提とされており、筋肉のけいれんや硬直などさまざまな特徴が見られます。
さらに厄介な点として部分発作だけで治まる場合もあれば、部分発作から全般発作に発展・変化する「二次性全般化発作」もあるため注意が必要です。

ここからは具体的な症状を見ていきましょう。
目を開いたまま瞳が上向きに動いて白目を剥き、歯を食いしばったり呼吸が一時的に止まったり、けいれんを起こすのを大発作と呼びます。
手足がガクガクと動く間代発作や、身体が硬直する強直発作、硬直した状態からけいれんが起こる強直間代発作や全身の力が抜けて卒倒する脱力発作なども大発作に含まれます。

また、身体がピクッと反応するミオクロニー発作や、意識はあるものの首や目がコントロールできず勝手に動いてしまう運動発作、明瞭に喋れなくなったり脈絡のない会話をする失語発作といった症状は、部分発作に分類されます。
複雑部分発作に含まれる、会話の途中に前ぶれなく意識を失ったり、身体の全ての動きが停止する症状は側頭葉起源・欠神発作と呼ばれます。

この他、本人に自覚はあるものの傍目からは分かりにくい発作もあります。
身体の一部分がしびれたり一時的に感覚がなくなってしまう体性感覚発作、気分が悪くなったり目眩を起こす自律神経発作、視角や嗅覚・聴覚などが過敏になったり何かしらの異常が見られる感覚発作などが挙げられます。
不安や恐怖心をあおる精神発作などを含め、一見すると精神疾患と区別がつきにくく判断が遅れやすいです。
これらの症状が見られた場合は、専門の医師による脳波のチェック以外にてんかんであるかどうかを判断・診断することは困難です。

ただ、このように発作の症状は多彩ではあるものの、患者・個人ひとりひとりに見られる症状はほぼ一定です。
同じような発作・兆候が繰り返し起こることが、てんかんの特徴であるからです。ご自身やお子さんの症状を細かく記録しておくことが大きな対策となります。

発作を起こしている最中は、脳の中の電流が乱れており、その際に脳波を測定すると異常な波があらわれます。
そのため、てんかんの診断は脳波の測定を用いるのが一般的とされています。

てんかんと間違えられやすいその他の病気の症状

一口にてんかんと言っても、実に症状が多彩です。そのため、てんかんに似ている病気もいくつか存在します。
似ている病気を把握して、判断の手がかりにすることも大切なので、きちんと学んでいきましょう。

てんかんに非常に似ている病気に「熱性けいれん」があります。
熱性けいれんとは、風邪をはじめとする38℃以上の高熱が発生した際に、意識消失とともに全身がけいれんする症状を指します。
小児期・乳幼児期に見られる一般的な発作性疾患のひとつであり、ひきつけという呼び名もあります。
発症しやすい期間は生後6ヶ月から5歳頃までの時期と広く、発熱後24時間以内に1〜3分程度のけいれんを起こします。
見分け方としては、熱性けいれんは発熱時にしか起きませんが、てんかんの場合は発熱時以外にも発作が起こります。

熱性けいれんが見られた後にてんかんを発症する確率が上昇する、という報告がなされているため熱性けいれんが起きた際には注意が必要です。
ただ、このふたつの症状の因果関係までは証明されておらず、熱性けいれんの後必ずしも発症するという訳ではないものの、警戒しておいた方が良いのは確実です。

次に、「急性脳症」もよくてんかんに似ている病気として挙げられます。
急性脳症とはウイルス感染症によるものが原因で発症するものであり、感染症によって急激に脳の内部にむくみが発生して、意識のレベルが低下・混濁する病気のことを指します。
花粉症のように、身体の中に入った異物(この場合はウイルス)に対して過剰な免疫反応、生体防御反応を示すため、全身の血管に炎症を起こして意識障害やけいれん、嘔吐や血圧の上昇、呼吸の変化・異常などが見られるようになります。

多彩な症状のうち、中でも意識障害やけいれんといったものは、てんかん発作時と非常に似ています。
区別の仕方としては、てんかんの場合は原因の疾患が分かりにくいケースが多いのに対して、急性脳症の場合はインフルエンザウイルスや、急性胃腸炎の原因であるロタウイルス、突発性湿疹の元凶であるヒトヘルペスウイルスなど原因菌がはっきりしています。
そもそもの発症要因が明らかであるため、その原因菌の根絶治療が最も有効な対処法となります。

他に似ている病気として「髄膜炎」があります。脳や脊髄を覆う膜である髄膜が、炎症を起こすことによって諸症状が発生します。
主に見られるものとしては高熱や酷い頭痛、悪寒・嘔吐といったような、風邪に酷似した症状が多いです。
また、急性脳症のように意識障害やけいれんといった症状を引き起こすケースも多いです。

てんかんと似ている症状を引き起こす髄膜炎ですが、こちらの場合発症から24時間〜48時間以内に命に関わる事態に追い込まれるため、非常に危険な病気です。
対処法としては髄膜炎菌の滅菌しかないため、風邪のような症状から事態が急変してけいれんを起こしたり意識障害が見られたら、速やかに病院へ行きましょう。

てんかん症状が起こる前に予兆はある?

てんかん自体はさまざまな症状がありますが、個人にあらわれる症状はパターンが決まっています。
さらに言えば、発作が起きる前に予兆はあることが多く、その予兆に見られる兆候・特徴もある程度同じ症状・パターンである場合が多いです。
従って、予兆の特徴を知ることであらかじめ発作を防いだり、発症しても軽減させることができます。

一般的に見受けられる予兆の兆候を見ていきましょう。
手足がピリピリしたり電気が走ったり、感覚が薄くなったり、手足が動かせない・熱い・冷たいといった予兆を、身体感覚症状と呼びます。
点や星、線や円・球体など色々な形が視界に浮かぶ視覚症状、キーン・カンカンなど機械的な音や金属的な音、人の声や雑踏の音など聴こえるはずのない音が感知される聴覚症状なども予兆の一種です。

他にも、めまいやふらつきなど身体動揺感や、焦げた匂い・硫黄の匂いといった嗅覚症状、苦い・甘い味がするといった味覚症状なども挙げられます。
胃腸がもたれたりゴロゴロするといった内臓の違和感、頭痛や動悸、恐怖感や拍動の乱れなど非常に多種多彩です。

また、これらの予兆よりもさらに1時間もしくは半日前や2〜3日前など、かなり前の段階から身体がサインを示す場合があります。
この場合前駆症状と呼ばれ、むやみにイライラしたり不安になったりなど情緒不安定な状態に陥ったり、頭痛や目眩といった身体的弊害があらわれたりという症状が代表的です。

こういった予兆や前駆症状は、部分発作を発症する人によく見られる傾向にあります。
もちろん、万人に当てはまらないとはされているものの、症状の重度の差はあれど何かしらの予兆や前駆症状が見られる場合が非常に多いです。
そのため、発作日記には発作が起きた時だけに限らず、予兆やさらに前の段階から感じた違和感を細かく記録しておくことが大切です。
これにより、予兆と思われる症状がわずかでも見られた際に、自身や周囲が対処できる範囲が広がるからです。

たとえば、手首のどのあたりまで痺れはじめたらてんかんの発作が起き始める、耳鳴りの音の大きさがどのあたりまで上昇すれば発作へと発展するなど、こと細かに記すことで傾向を把握して、発作が来るタイミングを遅らせることができます。
そうすれば、前もって安全な位置へと移動したり、ベンチに横になるなどして転倒によるケガを防いだり、周囲に配慮する余裕ができ本人も家族にも心の余裕が生まれます。
記録して分析を進めることにより自己コントロールの精度を上げることができれば、意識障害が生まれる瞬間を減らしたり、手足のけいれんそのものをなくしたりといった大きな成果を挙げることができるでしょう。

さらに、迷走神経刺激療法を実施している場合、予兆を感じ取った際にマグネットモードを使用することによって、発作の抑制ができる可能性が上昇します。
発作日記による傾向の分析の効果の大きさは個人差があるものの、本人の身体・体調の変化の傾向を知る上で大きく役立ちます。

てんかん症状の原因

症候性てんかんは慢性的な脳の疾患であり、その多くは部分てんかんとされています。
症候性てんかんの原因としては、妊娠の段階による遺伝や出産時に起きた何らかの問題による脳損傷といった先天性のもの、頭部外傷・脳の感染症といった生後に見られる後天性のもの、これら2つが挙げられます。
てんかんの厄介な点は、発症のタイミングがランダムである点です。
特に後天性のものに見られる傾向として、頭部外傷など何らかの問題が発生した直後に発症しだすケースもあれば、事故から2〜3年たって発症するケース、さらには10年もの歳月を過ぎてから発症するケースもあります。

具体的な原因を見ていきましょう。
一部のてんかんに見られる原因として、先天的なものである「遺伝」が関係している場合があります。
主な病例・症例としては、常染色体優性家族性側頭葉てんかんや、良性家族性新生児てんかんといった遺伝性のてんかんが挙げられます。
またこういった症状が直接的に遺伝していなくても、神経線維腫症I型や結節性硬化症といった、てんかんを起こしやすい脳の構造異常が遺伝する、間接的な遺伝が原因となっている場合もあります。
注釈として、「良性」の冠がついた種類に関しては年齢に依存するものが多いため、例外はあるものの小学校高学年から中学校までの時期に治るケースが多いです。

幼少期に見られる症状は先天性のものの他に、出産の際に原因が発生している場合もあります。
出産時に難産であり、時間がかかってしまったが故に新生児が低酸素脳症になってしまい、数年経ってからてんかんを発症するというケースです。
もちろん交通事故などに遭遇して、強く頭を打って半日以上目が覚めないなど「高エネルギー外傷」と呼ばれる強い頭部への外傷・損傷も原因となりえます。
ただし、階段や公園の遊具から頭から落下したり、急に走って壁や柱に激突したりといった、日常の中で起こりうる頭部への軽微な外傷に関してはてんかんとはほぼ無関係と考えて良いです。

成人後や高齢期に発症するてんかんの主な原因として挙げられるのが、「脳血管障害」です。
一般的には脳卒中という名で知られており、特に50歳以上の高齢期に起きるてんかんの中で最も多いとされる原因となっています。
脳血管障害の中には、くも膜下出血や脳出血、脳梗塞といった症状・病気も含まれます。
てんかんは脳の神経細胞の電気的な刺激が主体ですが、脳血管障害を発症すると脳の神経細胞が直接ダメージを受けてしまいます。

また、高齢になると身体能力が低下して転倒する可能性が増えて、頭部の外傷によるてんかんが発生する確率が上昇します。
転倒して頭部を損傷することにより、さらにてんかんにつながる脳腫瘍も増えてしまいます。
他にも、高齢期特有であるアルツハイマー病などの神経変性疾患も、てんかんの原因となる可能性が高いとして注目を集めています。